相場格言集B   提供 東洋経済新報社
【2日新甫(しんぽ)は荒れる】
月初の立合が2日、月曜日から始まる月は荒れるという相場ジンクス。特に、月初は高く月末にかけて安くなるケースが多いようだ。立合日数が通常の月より2日程度多くなり月末に処分売りが出やすくなることも一因。

【全面高したあとの相場は怖い】
相場が底入れして上昇に向かい始める時は、多くの人が相場に対して自信を持っているわけではありません。業績がいいとか、新製品を売り出したといったことなどを手がかりに、ひと握りの銘柄が買われます。それらの銘柄がある程度上昇しますと、それまで動いていなかった同業種の銘柄や発行株数の似通った銘柄、あるいは同じテーマの銘柄などが比較感で買われるようになります。こういった展開の局面では最初に買われた銘柄が調整しても2番手銘柄群がカバーして全体相場としては上昇基調を続けます。出遅れ買いが広がっていくと、最後は無配株までが割安となって買われ、さらには、最初に買われて調整していた銘柄が、無配株の突き上げで、割り負けとなって買い直され、市場は全面高の様相となります。全面高した後の調整は支える銘柄がないため厳しい下げとなります。東証1部の値上り銘柄数が1000を超えたらほぼ全面高とみて注意するのがいいでしょう。

【1銘柄で見るな、全体の中で見よ】
人間が、ひとりで生きることができないで、多くの人に囲まれて生きるように、銘柄も多くの上場銘柄と共に存在しています。いくら内容がよくて、投資採算的に割安すと思われても、全般の相場地合いに抗することはできないという格言です。もちろん、全般相場が弱いなかで、大きく買われる銘柄は出ますが、それも、置かれている相場環境において登場する理由があるわけで、「たまたま」とうことではありません。チャートで、できるだけ多くの銘柄の動き、とくに、位置・方向などをつかんでおくことが大切です。

【銘柄発掘は証券会社にやらせろ】
変動の激しい社会で、有望銘柄を研究し選び出すことは個人にとって難しいことです。ましてや、直接、企業を訪問して調査することは無理です。そこで、優秀なアナリストを抱え、日々、企業調査を行っている証券会社を有効に活用しなさいという教えです。数社の証券会社に口座を開いて、調査資料を送ってもらうのがいいでしょう。そうすれば、只でアナリストを使っているのと同じ効果があります。ただし、その際、資料をもらっているからといって、絶対に証券会社のいいなりにならないことが大切で、売買のタイミングはチャートを使って自分で行うことです。趣味で株投資する人は別として、本当に株で儲けたい人は「アナリストは私のためにある」というくらいの割り切った気持ちが必要です。

【相場は夢と現実の間で揺れ動く】
小学生の時、われわれ年輩者は修学旅行のことをあれこれ夢見て嬉しかったものです。そいう時は寒さの中を学校に通うのもむしろ楽しいと感じたものです。昔はテレビが今のように普及していませんでしたから、知らない土地への憧れは今の子供たちに比べ大変強いものでした。しかし、今の子供たちも、勉強を頑張ればゲーム機を買ってあげるといえばゲーム機を手にした時の夢を膨らませて頑張ります。相場だって同じです。現実の姿より先行きを期待して動きます。現実が厳しければ厳しいほど、夢に賭ける気持ちは強いのです。景気が悪い、企業業績が悪いという現実を突きつけられると、誰しも及び腰となって、相場は下落しますが、明確な目標(夢)があれば必ず相場は復調するという教えです。

【ついた値段は正しい】
そのまま表現すれば、市場で売り手と買い手によって、取引きが成立した株価は正しいものである、ということですが、現在と以前とではかなり意味合いが違うようです。かつては、仕手筋と呼ばれる人達が、かなり強引な取引で1株利益が5,6円程度の株をカラ売りを誘って人気化させ1000円を超す相場にもっていくということは結構、頻繁にありました。カラ売りした人からみれば理屈に合わない値段であっても、売方・買方の力関係で決まった以上、その株価は正しいということです。現在は、仕手筋がすっかり影を潜め、代わって優秀なアナリストが分析の結果、提示した株価は理論的に正しいということです。かつての「力関係」での株価がよかったのか、現在のように「理論的分析」の株価がいいのか、面白みということでは違いがありそうですが、今も昔も、取引所で成立した値段を信じて受け入れないと市場主義の基本が揺るいでしまいます。

【年の前半と後半では相場の主役が変わる】
株は常に先々を読み、先取りしながら動きます。庶民のレベルでは、明日のことより日々の生活が重要ですが、株式投資では生活に余裕のある資金が多く含まれていますから、終わったことや、今日明日のことにはまったく関心なく、将来がどうなるかが最大の関心事です。特に、儲かった人も、損した人も、「来年はどういう相場展開となるか」「来年はどういうテーマが中心となるのか」「来年はどんな銘柄が活躍するのか」など、その年の後半になると先取りの期待が膨らみ、活躍するとみられる銘柄が買われ始めます。そして、年末年始になるとアンケート上位銘柄に人気が高まります。大体、そうした銘柄は4月頃にピークをつけ、6月頃にかけて出遅れ株が買われて前半相場が終わり、また、来年を期待する展開となります。

【株に感情なく、真の主役は数字である】
株は非情で冷淡なものという教えです。株の本などには、株は夢・ロマンを先取りして動くと紹介され、株がいかにも感情豊かなもののように書かれていますが、最終的には将来の1株利益とか配当がどのようなものになるかという数字に収束されます。奥さんに、将来は、給料が上がって家を建て海外旅行もしようといった夢を語るのは男の常ですが、いつまでたっても実現しないと愛想をつかされてしまいます。真の投資家は夢・ロマンの実現性とその時の数字を予測し投資採算を弾き出しているのです。

【仏の顔、閻魔の顔も3,4度】
やさしい仏さまの顔もいつも見ていると最初ほどのありがたみが薄れ、反対に怖い閻魔さんの顔も恐くなくなってきます。株式相場で仏さまとは好材料で、閻魔さんは悪材料ですが、いい材料も悪い材料でも何回もハヤシ立てると影響が薄くなるので、いつまでもその材料を同じように評価してはいけない、という教えです。そのメドは一般的には「仏の顔も2度、3度」といわれますが、相場の場合は3回から4回を目安にしておけばいいということです。仮に、業績が悪くなる材料があった場合でも、マーケットを代表するような代表的な銘柄が3,4銘柄決算悪を発表すればひとまず出尽くしとなります。また、さらに悪くなる場合でも減額修正が3,4回出れば、織り込んでしまいます。

【株は上げ下げ最後のところでは、止めようとしても止められない】
株は売り方と買い方の戦い、という側面を持っています。とくに、信用取引銘柄で、取組が拮抗するほど、売り方、買い方とも互いに建玉の利益拡大化と実現化を狙って戦いは激しいものとなるという教えです。戦国時代の戦いのように、戦の最終局面では敵の本陣に迫り、相手側も必至で守ろうとしますから雌雄を決する非情に激しい戦いとなり、その段階ではもはや戦いを止めることはでないからです。かつて、大阪の中山製鋼の大仕手戦相場では自殺者が出るところまでいきました。今では、仕手的な動きは規制されて、いきつくところまで行くような相場は少なくなりましたが、それでも2000年のIT相場は仕手的な相場で誰も止められないほどの熱狂相場だったといえます。

【女子が生まれたら桐を植えるがごとくに株を買え】
昔は、家に女の子が生まれたら桐を植えて、お嫁に行く時に、大きくなった桐で作ったタンスを持たせたといいます。株も、子供の成長など人生設計に合わせて投資するのがいいという教えです。とくに、現在では高校生、大学生と進学すれば相当な資金が必要ですから、投機的な銘柄に投資して資金を無くすることはできませんから、銘柄選びは安全性を重視することが大事です。また、桐が大きくなるには大体20年です。株もこのくらいの期間で殖やす気持ちなら、時代の流れにマッチした銘柄に投資して成果を上げることは可能です。

【相場の最初は小型株から】
大きく下げたあとの相場では、買い方は処分売りで損を出し意気消沈していますから、次に買いなさいといってもなかなか腰を上げようとはしません。参加者が少ないわけですから、少ない資金で反応する小型銘柄が中心になるという経験則からの教えです。最近では98年秋から2000年春の大きな相場でも、最初は小型の店頭株が大きく買われています。野球でも1、2番打者は足の速い、店頭銘柄のような人です。また、景気と小型株の関係でも、ヒト、モノ、カネなど規模の小さい小型企業のほうが良くなるときも悪くなる時も早く影響が出ます。店頭株が大きく上げ始めたら本物の相場、店頭株が大きく下げてきたら全体相場は危険と判断することができます。

【政治は、株ではなく失業とインフレに関心がある】
政治家が落選すればただの人、といわられるように票がすべてです。日本では間接金融が中心のため、国民が株式を保有している比率が非常に小さいため、政治家は株の話をしても票につながりませんし、それどころか、反対に、株で悪いことをしている政治家ではないかと受け止められるからです。政治家は、国民生活に直結している失業と、バブル当時のようなインフレを放置していると、票に影響しますから失業対策とインフレ対策には全力で取り組みます。真の資本主義国家ではない日本では政治家に株対策を期待しても無駄という教えです。

【「もう」はまだなり、「まだ」はもうなり】
相場は自分の予測した通りや思った通りにはなかなかいかないもという教えです。大きく上げてきた相場や、反対に大きく下げてきた相場などでは、「ここまで上がればもういいだろう」「ここまで下がればもういいだろう」と思うものですが、そのように思うのはその人だけではなく多くの人も思っている場合が多いため、さらにその水準から上がったり下がったりすことが多々あります。逆に、まだ上がるだろうとか、まだ下がるだろうと思った時は、そこが相場の天井圏であったり底値圏だったりします。「もう」いいだろう、「まだ」だろうと思った時、とくに自信を持ってそう思ったときが一番危険ですから、深呼吸をしてもう一度冷静に相場を見つめることが大切です。

【相場は思った通りには動かない】
理外の理という格言とほぼ同じ意味です。もちろん、勉強や研究を重ねたからこそ人類は月に行くこともできたのですから、理論を学ぶことは非常に大切ですが、人間には感情がついているため、理屈だけでは推し量れないという教えです。ましてや、利害が対立する株の世界では、たとえば、理路整然と相場展望を述べる著名人がいたとすれば、その逆を行こうとする人が現れます。なぜなら、理路整然と説明つくことは、相場には十分織り込まれているからです。とくに、あなたの周辺で、投資経験の浅い人までが理路整然と相場を語るようなときは相場は反対に動くことが多いので注意が必要です。

【株はインフレに強いが、デフレに弱い】
インフレの時には株買いに力を入れもいいが、デフレの時には株をやめて現金を持っているのがいいという教えです。株は企業の収益を反映するものですから、企業にとっては、物の値段が下がる時より値段の上がる時のほうが儲けは大きくなるので株も上がりやすくなります。つまり、企業の売上=数量×単価ですから、インフレの時は、単価が上昇するため利益が大きく増加します。反対にデフレでは単価が下がるため、その分、利益は減りますし、減った分を数量でカバーしようとして販売攻勢をかけるため経費が膨らんで思ったほど利益は出ません。資本主義・市場主義のもとでは長期的にはインフレとデフレの繰り返しで経済が動いているわけですから、いつまでもインフレ、デフレのままということはありませんので、「インフレ進行中は買い、デフレ進行中は売り」と言い換えることもできるでしょう。

【アナリストの説明できない相場がおもしろい】
相場は思った通りには動かない、相場は理外の理、相場は知ったらしまい、などと同じ意味です。アナリストは夢とかロマンより、足下の数字が大事です。大きく変動した相場について、すっきりと説明できた時には相場は織り込み済みとなって、理屈通りには動かないのが当たり前です。今は、相場形成上でアナリストがすべてのようにみられていますが、以前はアナリストのことを調査マンといって、証券会社でもどちらかといえば相場観のない人が配属されていた部署で、多くの場合、株式部長の指示の下で材料取りをしていたのです。そうした当時を知っている人が、アナリストの理屈のつかない銘柄がおもしろいといっています。まだ日本のアナリストは人数も少なく、全銘柄のカバーは無理で、全銘柄を厳しくチエックしている会社四季報のほうがいいという評価です。

【指数はいずれサヤ寄せする】
指数とは、日経平均株価、日経店頭平均株価、東証2部平均株価、大証平均株価、TOPIX、大型株指数、小型株指数などです。アメリカではNYダウ平均株価、ナスダック指数などです。以前に比べるとずいぶん増えましたが、集約しますと大型株型か小型株型かということになります。昭和40年代頃までは指数も多くなかったため、日経平均(当時は東証平均)と大証平均が指数の比較で使われていました。薬品など内需関連銘柄で小型株の多い大証平均、重厚長大型の大型銘柄が多い東証平均が、その時々の景気情勢などで、どちらかが先に上下しますが、時間を置いて両指数はいずれ上昇率・下落率が接近するように動きます。最近では1998年から2000年春にかけての相場では、店頭株指数から上昇して順次、大型株系の指数がサヤ寄せする形で上昇しました。また、2001年秋のテロ事件の下げ相場を契機に、ナスダック指数に比べ下落率の小さかったNYダウがナスダッゥにサヤ寄せする形で下げました。指数をよく観察しましょうという教えです。

【株で大きく儲けたければ売上をみよ】
企業は製品、サービスなどを社会に提供し、その結果として売上高によって社会と繋がっています。もちろん、利益を上げることは大切ですが、仮に、経費削減によって利益を確保しようとすることには限界がありますから、やはり、売上の伸長によって利益を確保することが本来の姿です。不況になってきますと、競争力のある製品や時代にマッチした製品でないと売上は増えませんから、銘柄選びは売上を見ておけばよいわけです。「テーマ」といわれる銘柄は、売上の増える企業の株ということです。利益だけに目を向けるのではなく、売上に注目して銘柄を選べば大きく儲けるチャンスがあるという教えです。

【女房を質に入れても株を買え】
昔の人は、ずいぶんと激しいことを言っていたものです。「女房は…」ではなく、「女房を…」といっているところが大事なところです。「女房は」と表現したのでは、株の売買をするときはいつも女房を質に入れている印象ですが、「女房を」と表現していることで、大切な奥さんを担保に差し出してお金を借りてでも株を買う絶好の時である、という昔の相場師の強い気持ちが伝わります。実際に奥さんを質に入れるということではなく、数年に一度というような買い場は必ずあるので、その時は中途半端な気持ちではなく思い切って買いなさいという教えです。

【株は経済の先行きを映す鏡】
人は、鏡に映る自分の顔色や表情、姿などで健康かどうかを判断することが多いものです。顔色がいいねと言われると嬉しく、反対に顔色が悪いといわれるとドキッとします。これと同じように、経済・景気を人の顔色や姿に、株価と株式マーケットを鏡に見立てて、経済・景気の健康状態を論じる時に使います。例えば、株価の低落傾向や株式マーケットで出来高が少なく沈滞している時は、経済の先行きがおもわしくないことを表しているので、政策者は経済対策が必要ということです。90年代半ばの証券不祥事の続いた時は、鏡が曇って経済の姿を正しく映していないとの批判が高まりましたが、証券界はエリを正し、鏡を磨きましたので、現在では鏡に映っている経済は姿そのままといえるでしょう。